いくひさしい、鋭いぼくたちを縦横無尽に闊歩させ、異父兄妹をぼくに諭させた、粋な
きみに、さ、感謝してます。ぼくたちのおかあさんは、ひとりでした。きみは、産まれる
と、ちかくの小母さんに育てていただきました、ね。とても、ニコニコしてたのを憶えて
います。ぼくときみとの再会は、南青山のプラットホームでした。待合用のイスで、ぼく
は眠り、そして、ピーチの薫りがするきみに、もたれかかったのでした。きみはいやがら
ずに、そそくさとその場を立ち去ろうとしなかったのです。美雨、とぼくは、寝言を云い
ました。約二十年ぶりの再会が、ぼくの寝言で始まろうとは。な~に、直? へっ? だ、
だれ? きみは。「美雨だよ。しらない?」と、きみは応えました。おもいだした。と、ぼ
くは云いました。ひさしぶり。キレイになった、ね。うん。ありがとう。うれしいわ。こ
この駅で乗ったの? ぼくは、そ、だよ。きみは? わたしも(笑)。このまま、どこかへ
いこうか。ええ。わたし、あと二時間くらい、ここで道草していこうかとおもってたのよ。
手をにぎってくれたんだね。どうもありがとう。と、ぼく。そのかわり、手の甲にキスし
て。「がってんだあ」CHU! わたしも、おでこにキスさせて。うん。といって、ぼくは
仰け反りました。そしたら、接吻箇所は、ぼくの鼻ときみのクチビル、ピーチの匂いがし
ました、よ。ホント? そ、ホント、だよ。ま、うれし。LOVE&PEACH.
「ぼくが、きみを癒してあげる」「わたしの、白血病を?」「ふうむ」夜空に星座が巡って
いて、とても美しいぞ、よ。ベテルギウスって、そ、オリオンの。いまはもうないのよ。
ひかりが遅れて届いているだけ。何光年もさきだもの、ね。「大和の諸君、また逢えて嬉し
いよ」と、ぼくは云いました。ぷっ。と、きみは吹きだしました。きょう、霞町のシリン
でワインを呑んだら、ぼくんちにこない? てれくさい台詞でした、よ。れれれのれ~。
「直んちに、とまっていいの?」「ああ」「ま、うれし。ホントね?」「ぼくね、宇宙人なの」
「そりゃあ、そうよ。地球人だし、日本人だし」「だから、ウソつかない」「ヘンなの、ね」
ねえ、わたし、直の仔がほしいの。それが、約二十年前からのわたしの、おおきな希望
なの、さ。「叶えてあげる」と、ぼく。だいじょうぶ。わたしの白血病は遺伝しないから。
そ? じゃあ、これから営もう。うん、シャワーあびてから、ね。いま、ちょうど排卵時
期なの。ま、グッドタイミングだ、ね。CIAO! また、あおね。と云って、睡眠を約
五時間とってから、さよならをしました。十三日後、美雨から電話がリンリン。「はい。も
しもし。どう、体調は?」開口一番。「直、妊娠したみたい。あの、夜中の約二時半に」「一
回で?」「うん。薬局の妊娠検査薬で陽性なのよ」「いまから、ぼくんちに来れる?」「うん、
いいわ。わたし、なんだか、うれしい」「ぼくも、だよ」「あいしてる」「ぼくも、だよ」
十月十日で無事、公一郎という男の仔が産まれました。ちょうど、朝顔が咲いている季
節に……。で、十二日後に母仔とも、ぼくんちにクリニックからタクシーで移動しました。
降りました。到着しました。そのとたん、公一郎をぼくに預け、美雨はバタと倒れました。
だいじょうぶ? うん。と、かぼそい声で。出産で、よほど体力を使い果たしたのでしょ
う。すぐ、ベッドをつくりました。その三日後、突然ですが、美雨は他界しました。眞っ
白い白雪姫のような笑顔を漂わせ、ぼくはおねえさんに電話しました。びっくりしていま
した。当然です、ね。すぐこちらに向かう、とのこと。公一郎が、カーブを描いて、しょ
んべんをしました。お小水でしょう? と、どこからともなく美雨のおしかりの言の葉が。
それから、ぼくはバルコニーのベンチに横たわって、ボー然。すると、どうしたことでし
ょう。旭まえの東の空に、美雨をのせたオレンジ色の確認飛行物体が翔んでいったと、さ。
萩 原 直 樹
naosara~除霊・お祓い・ヒーリング~
除霊・お祓い・ヒーリングを行うアカデミー21代表の萩原直樹のブログです
2011年11月17日木曜日
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